当院の鍼灸治療
当院の鍼治療は、浅く刺す鍼(はり)です
初めてお電話やメールなどでご連絡いただいた場合、浅い鍼だと説明させていただきますが、中にはお越しになられ「え、浅い鍼?」とガッカリされる方がいらっしゃいます。わざわざお越しいただいたのにガッカリされるのは残念ですので、
浅い鍼をする治療院だとご承知の上ご来院ください。
当院では、鍼の治療効果は浅く刺す方が良いと考えています。ましてや、危険性もありません。
- 経穴(けいけつ)
- いわゆる「ツボ」です。
- 経絡(けいらく)
- 経穴と経穴を巡りながら各臓腑に繋がります。
当院は、痛みはもちろんですが「不通則病 → 通(つう)ぜざれば、すなわち病(や)む」だと考えています。この不通とは経絡の気血の通りが悪くなっている事です。なぜ不通になっているのかを診て通すことが、治療するうえでとても大切になります。 お話を伺って、経絡を使った検査(経絡診断)を行い、なぜこのような症状をなしているのかを調べて、鍼やお灸などで治療していきます。
「気血通利すれば百病生ぜず」。気血が通れば病気にならないということです。
*経絡診断とは、簡単に言えば、肺がどの様な状態にあるのかを肺につながる経絡(肺経)にテスターを用いて、脈で判断し、その状態にあった治療を進めていくことです。当院の院長は広島の十河医院で十河先生に12年近くお世話になり、経絡診断を教えていただきました。その時の経験を鍼灸治療に活かしたいと思っています。
例えば、
- 経気虚(ききょ)
- 気が少ない状態
- 気実・気滞(きじつ・きたい)
- 気が多い、余った状態
- 寒熱(かんねつ)
- 寒性炎症…温めると好転する炎症
熱性炎症…冷やすと好転する炎症 - 病理産物
- 瘀血(おけつ)、痰、水など
- 陽虚(ようきょ)
- 陽が少なくなっている、冷えている状態
- 陰虚(いんきょ)
- 陰が少なくなっている、熱い状態、乾いた状態
- 外邪(がいじゃ)
- 風寒(ふうかん)…ウイルス、細菌、風邪、アレルギー
風熱(ふうねつ)…ウイルス、細菌、アレルギー
風湿(ふうしつ)…ウイルス、細菌
当院の鍼灸の種類
鍼は、長さ39mm、太さ0.18mmと0.16mmの2種類で使い分けています。
鍼の消毒には、オートクレーブ高圧蒸気滅菌器を使用しており、安全です。
ディスポ鍼(使い捨て鍼)もご用意していますが、ご希望の方には、全身治療800円・局所治療400円を治療ごとに加算させていただきます。
お灸は、円筒灸(筒状の空間を作り、台座とする隔物灸の一種)を使用します。ご希望の方には、直灸(もぐさを揉んで直接皮膚に乗せる灸)も行います。
熱くなる物をしているのですから、お灸は熱くて当たり前なのです。しかし、治療を始められて間もない場合は、お灸の熱さがお分かりになられない方が多くいらっしゃいます。これは、経穴(けいけつ)や経絡(けいらく)が通じていない事だと考えます。治療を重ねてまいりますと、段々とお判りいただけるようになります。
*あまりにもお灸が熱い場合は、ご希望によりお灸を外しますので、ご心配はいりません。
鍼灸の特徴
鍼灸のメリット
【 全身治療 】
- 病院で様々な検査を受けたが異常が無い(レントゲン・CT・MRI・血液検査など)けれど痛みがある、症状がある
- 東洋医学では、病名にとらわれず症状がどの様な背景から成り立っているのか(弁証)を考え治療することができます。「弁証論治」の考え方です。
- 思わぬところが良くなる
- 腰痛症でお越しになった患者様を治療していると、最近便秘をしなくなった、身体のだるさが取れた、食欲が出た、風邪を引かなくなった、調子がいいなど、主訴とは関係ない症状の改善にもなります。
- 病気にならない身体作り
- 一般的に病気を治す治療方法は数多くあります。しかし、病気にならない治療は「漢方・鍼灸」など東洋医学だけです。当院は「養生医療」と称して日々、取り組んでいます。
- 小さなお子様も治療が受けられる
- 小児喘息、元気がない、よく下痢をするなど、保護者の方が心配をされて治療に連れて来られます。
弁証論治(ベんしょうろんち)とは
弁証施治(べんしょうせじ)とも言います。
弁証とは、病名とは別に症状の治療に必要な「陰陽・表裏・寒熱・虚実」などを四診によって定め、治療法などを決定していくことです。
弁証をもとに治療する事を「論治」あるいは施治といいます。
養生医療(ようじょういりょう)とは
「養生医療」とは私の自己流の言葉です。
一般的に「養生」といえば、食事・運動・睡眠など自身で気を付けることを思い浮かびますが、未だ「病気」として成立していない状態(未病)で、病気にならないように患者様の身体を診て治療する事です。
入退院を繰り返すことなく、少しでも長くお元気に過ごされ、充実した日々を送られますようにと治療していきます。
【 局所治療 】
- 時間がかからない
- 忙しい中でどうしても辛い腰の痛みに、ちょっと腰だけを治療したい、といった場合など、仕事の合間に抜けていただいて治療が可能です。
鍼灸のデメリット
- イメージが悪い
- 鍼は痛い・怖い、お灸は熱い・火傷する、など敬遠されがちです。
- どこでも誰にでも同じ治療が受けられない
- 治療する施術者が違えば、治療の内容が全く違ってしまいます。例えば鍼をする数、深さ、場所(経穴)、お灸も直灸か、間接灸なのかなど、さまざまです。
【 局所治療では、治療効果があまりない場合も 】
- 痛む部位にしか鍼灸治療をしないため、原因がなかなか取り除けず、治療効果がない場合があります。
鍼を刺す深さ
【 鍼を深く刺す場合 】
- 鍼を深く刺すとズーンと重たく感じたり、場合によっては痛く感じたり、電気が流れるように感じたりすることがあります(=響き)。治療を受けられる患者様の好みになりますが、響きが嫌いな方、逆にお好きな方、響きがないと治療を受けた気にならないなど、さまざまです。
- 鍼を深く刺した状態で身体を少しでも動かしてしまうと、鍼が曲がったり、そのために抜けにくくなり痛みを生じたり、場合によっては折れてしまう危険性があります。
- 背中や胸などに深い鍼をした場合、気胸(肺に穴が開いてしまう事)を起こしてしまい、呼吸困難になってしまうこともあります。
【 鍼を浅く刺す場合 】
- 刺激がほとんどありません。鍼治療が初めての方、鍼が怖い人でも安心して治療が受けられます。一方、強い刺激(響き)が好きな方には物足りない感が生じてしまい、場合によっては治療効果にも影響が出かねないこともあります。
四診
中医学では患者様を診るためにあたって、とても重要なことです。
- 望診
- お顔の表情、面色、形態、体色などを診る
舌(舌の形・色、舌苔(舌に付いている苔(こけ)など)を診る - 聞診
- 声(大きさ、張り、口調など)呼吸などを診る
- 問診
- 色々とお話を聞く
- 切診
- 脈(脈の形状、強弱、回数など)を診る
腹(お腹の状態、張りや痛みなど)を診る
五行論
中国自然哲学の重要な思想の一つで、五行説ともいいます。例えば、「黄帝内経」の底流をなすのは、人体を小宇宙とみなし、天地間の自然現象と対比して人体の機能を考える天人合一の思想であり、この中で述べられている五行説は「木・火・土・金・水」の五要素の連鎖的な質的移行と平衡によって、人体の働きを説明する仮説であるということです。
<五行色体表>
五行説に基づいて、各種の現象を「木・火・土・金・水」の五要素に分類し、一覧表にしたもの
五行色体表の一部を表記
本治法
基の治療・・・家であれば基礎、身体であれば五臓六腑の治療になります。
例えば、耳は「腎」に属します。腎を補うことで耳の治療にも繋がります。身体のいたるところに五臓が属しています。五臓を治療することで、身体のいたるところの治療になります。身体を強くする、丈夫にする治療です。
標治法
患部(訴えられる部位)の治療になります。原因のための治療や、身体を丈夫にする治療とは異なります。
標本同治
基本、当院は本治法と標治法を同時(全身治療の事)に治療しています。
鍼灸の歴史
鍼灸は今から約2000年前の古代中国で発祥しました。
当初は、石鍼(石を削って使用)と呼ばれる鍼で、主に膿などを破って出すために使われていました。のちに動物や魚の骨を用いた骨鍼、竹を用いた竹鍼、陶器の破片でできた陶鍼などが用いられるようになります。
現代のような金属の鍼が使われるようになったのは、戦国時代に入った頃からといわれています。
古代中国の陽子江流域や南方の地質は豊かで、さまざまな植物が育った場所では、植物の根・枝・木・草・葉・種などを煎じて飲む療法が発達していったとされます。また、黄河流域の土地は痩せていて植物も少なく、煎じ薬よりも鍼灸療法が発達したと考えられています。
漢代に入ると、現代でも大いに活用されている世界最古の医学書「黄帝内経」が編集されます。鍼・灸・生薬・按摩が発展し、古来より陰陽論、五行論と融合し、現代へ伝わってきました。
【 鍼灸と日本 】
日本に鍼灸が伝わるのは六世紀頃で、朝鮮半島から伝来されたといわれています。
その後、律令制度「大宝律令(710年)」により整えられるなか、鍼博士・鍼生といった官職が鍼灸を扱う医学職として設けられます。
日本最古の医学全書「医心方」は、平安時代に鍼博士の地位にあった丹波康頼が舶来していた中国の医学書をもとに編集し、984年に円融天皇に献上したものです。
平安時代までは灸治療が盛んで、鍼治療は外科的に用いられていたようです。
室町時代から江戸時代にかけ、鍼灸は大きく発展していきます。
中国から様々な医学書が持ち込まれ、日本で解説したものが出版され、数多くの優れた治療家が現れました。
江戸時代、盲人の杉山和一が、現在でも日本鍼灸の特徴である菅鍼法(鍼を菅に入れた状態で刺入する方法)を発案しました。また、将軍綱吉の許しを受け、その庇護のもと盲人に対する鍼灸の教育制度を確立させていきました。
明治時代に入り、西洋医学が導入されると、漢方・鍼灸も含めた伝統医学は政府の欧米化政策のもとに排除される方向に動き始め、1874年(明治7年)に医制が発令され、西洋医学7科を定めましたが、その中には漢方・鍼灸は含まれませんでした。
鍼灸は営業資格としては残りましたが、それは視覚障害者を対象としたものでした。一方、灸治療は民間療法として広く普及していきました。
欧米諸国では東洋医学の研究が盛んに行われ、代替医療(健康を維持し、病院にかからないようにする)として鍼灸が行われています。
*現在、日本で鍼灸治療を行えるのは、医師・鍼師・灸師の国家資格を持つものだけです。
鍼灸がなぜ効くのか
ヒトの身体には病気やケガを自分で治す自然治癒力や、外から入ってくる病原体から身を守る免疫力が備わっています。傷害を受けるとそれらのシステムが働きだし、身体に様々な反応が起こります。例えば、血管を拡張させて酸素や栄養をたくさん含んだ新鮮な血液を呼び込んで新陳代謝を高めたり、異物と戦う白血球を呼び寄せて傷付いた部位から感染することを防いだりします。鍼灸治療はこのような反応を利用して、皮膚や筋肉に目には見えない微細な傷や小さな火傷を作り、筋肉の血液循環を改善して肩こりや腰痛を治したり、傷害を負った部位の修復を促進したりします。
また、ヒトの身体には痛みを抑制する様々な仕組みが備わっています。痛いところを押さえたり擦ったりすると痛みが和らぐとか、気分が良くなることや楽しいことをしている間は痛みが気にならないなど、誰もが経験されているのではないでしょうか。鍼灸の刺激は、このような痛みを抑制する仕組みを働かせるきっかけになり、その結果として鎮痛効果を発揮します。
さらに、身体には皮膚や筋肉などに刺激が加えられると自律神経の活動が変化し、自律神経が支配する臓器・器官の働きが反射的に調節される仕組みも備わっています。鍼や灸の刺激はその仕組みを利用して自律神経活動を変化させ、血管の調節をしたり臓器の働きを良くしたりします。その結果、血圧が調節されたり、ホルモンバランスが整えられたり、免疫系が活性化したりなど全身性の広範な効果が引き起こされます。ですから、鍼灸治療を続けていると体調が良くなり、病気になりにくくなるのです。
(公益社団法人 日本鍼灸師会のサイトより一部引用)
鍼灸治療の可能性を感じてください。